




アート倉持
1975年大阪生まれ。1999年より東京を拠点にライブイベントや作品展示などの企画を行っている。 漫画誌アックス(青林工藝舎)にてエッセイ『ル・デルニエ・クリの人びと』を連載中。zine『異聞新報』を不定期刊行中。 バンド『黒パイプ』でボーカルを担当。セッションユニット『OFFSEASON』や『everest c.c.』ではギターを弾く。稀にDJも行う。
註1:『게 N गो』
東京感電帯が今年の二月から新大久保のライブハウスEARTHDOMでゲリラ的に開催しているライブイベント名。ハングルとアルファベットとサンスクリットを組み合わせた文字列そのものが意味を生み出すことはないが、ユニバーサルに無理矢理「ゲンゴ」と発音でき、日本語話者であれば「言語」と読むことができるという仕掛けが施されている。
「読めない名前をわざわざつけたのは、コロナ禍で人と人が対面で会うことや移動が制限される中、人と社会の噛み合わなさというものがより良くない方向に進んでしまったと思わされるような出来事が規模の大小を問わずして自分の身の回りでも頻発していたからで、同じ言葉を使っているのにまるで会話が成り立たないような、そんなコミュニケーション・ブレイクダウンな状況に少しでも抵抗したいという思いがあったから。読めない文字をコピペしてググってみたところでどうしようもありませんし、そもそも意味のない言葉ですから調べようもありませんから。要するに言葉が単なる情報として処理されてしまいがちなSNSという空間から距離を置きたかった。『게 N गो』は、『entangle』『Bay City Rolaz』『stoic club』という三組のデュオ・ユニットがコアとなってスタートしましたが、新たに『Skin Job』『everest c.c.』などのユニットも加わりながら、毎回、各出演者が何か新しいことを試行錯誤しながら演奏/出演したり集まっているような、そんな場になりつつあります」(倉持)
註2:『東⚡️京⚡️感⚡️電⚡️帯』
「コロナ禍の一年目、東京都が最初の緊急事態宣言を発出する直前の2020年3月30日に都知事が行った〈緊急会見〉では、〈お願いベース〉としながらも〈カラオケ〉〈バー〉とともに〈“ナイト”クラブ〉や〈ライブハウス〉が〈出入りを当面自粛していただきたい〉場所として名指しされました。同年9月にbar bonoboのオーナー成さんから“こんな状況でも何かできないかな?”と持ちかけられたことがきっかけとなり、伊東さんとともに『東⚡️京⚡️感⚡️電⚡️帯』を名乗って企画ユニットのようなものを始めました。bonoboでは伊東、倉持、大谷能生、DJ Sobriety、Yoshitaka Shirakuraがコアメンバーとして出演するパーティーが不定期で開催されたり、伊東と倉持が毎年末に企画しているライブイベント『黒光湯』の開催を巡り議論する中、『新大久保アンダーグラウンドマーケット』のアイデアが生まれることに。自分たち的には『게 N गो』はこの動きの延長線上にある最新モデルの〈イベント〉という認識です」(倉持)
註3:『新大久保アンダーグラウンドマーケット』
度重なる〈緊急事態宣言〉や〈蔓延防止等重点措置〉の発出により通常営業がままならない状況に置かれていたEARTHDOMで、2020年末から2021年末にかけて不定期開催されていたフリーマーケット。アーティストやインディペンデントなアート/文化に関わる人びとが集い、自作の商品や作品を直接お客さんと対話しながら手売りするという場だった。普段は観客が立ち入ることのできない楽屋という空間を使った展示や、機材が取り払われることにより広くなったステージ上でのワークショップなど、通常営業時のライブハウスにはなかなかフィットしないアイデアの実践も試みられていた。
「日本各地の被災地をボランティアで忙しく飛び回っているyukalyさんが、それぞれの地域で作られた加工食品と一緒に鹿の頭蓋骨も持ってきていて。聞けば、彼女は2019年秋の台風で被害の大きかった房総半島の鋸南町を訪れた際に、山間の地域に暮らす高齢の農家さんたちが直面している獣害の問題を知り、そのお手伝いをするために足を運ぶようになったと。そして、間引いた野生動物が食や革の産業には還元されることなく、そのまま山に棄てられているということも知ったという。話を聞きながら僕は、本当は殺したくないけど荒らされ放題の畑をそのままにはしておけないから仕方なくやっているような、そんなまだ見ぬ土地の事情を想像しました。と同時に、アンダーグラウンドマーケットの開催を通して模索していたこと──既存の流通システムに依存せず、作品や商品を必要としている人に届けるための方法を小さな規模であっても実践してみる──と直結するような問題が千葉の山で起こっているんだなと感じました。アート、文化、創作、表現の場のみならず、パンデミックは都市のあらゆるインフラを直撃したわけで、この問題と千葉の山で起きている“人と自然の軋轢”には何か通底するものがあるんじゃないか、たとえアートや文化に属するものであっても、“売れるものしか作ってはならない”という発想への着地を避けることができない現行の資本主義社会が取りこぼしているものとは何なのか? そのヒントが都市部ではなくその外側にあるんじゃないかという直感がはたらいて、これはもう実際に現地へ足を運んでみるしかない!……と」(倉持)

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