騒音書簡2-37

2025年3月31日 歴史哲学徒たる君へ 非常に難解な手紙をありがとう。君の言葉を吟味して、ない知恵を絞って少し考えてみた。構造……後からわかる構造…そして構造の全体。だが、そのようにバッハを聞いているのだとは確信がもて …

騒音書簡2-36

2025年2月26日 鈴木殿、 構造と構成の違い。バッハにあって、クセナキスにないもの、あるいは逆にクセナキスにあってバッハにないもの。私はかなり単純に考えている。クセナキスには、ある意味では完全に構造がある。「楽譜」が …

騒音書簡2-35

2025年1月30日 市やん 市やんと書いてみたら、何十年も前になくなった市場を思い出した。熱々のコロッケのある肉屋、そこの娘は同級生だった。布団屋、愛想のいい夫婦がやっていて、主人のほうが長生きした。魚屋、おとなしい息 …

まとめ220321

2022年3月21日 市田良彦さま ひどい空音に襲来されていた時期がある。空襲警報が鳴り響いた。カチカチ山が騒音に包まれ、ケツに火がついたみたいだった。まことの耳鳴りだったが、それは空耳と区別がつかないていのものだと感じ …

騒音書簡2-34

2024年12月27日 Sôくん、 きみの新しい本はどんなものになるのかな。おっと、不意打ちを楽しみにしているので、出来上がるまで教えないでくれ。こちらはすでに書きはじめている。それなりに長いものにしたいので、それなりに …

騒音書簡2-33

2024年11月30日 市田良彦さま 近いうちに、ある本を書こうとしていて、僕もいやおうなく過去を思い出さねばならないのだが、なかなか思い出すことができない予感がしている。どうしたものか。今のところはまだ書く気がないので …

騒音書簡2-32

2024年10月29日 0歳の音楽家へ、 ある故人を偲んで催された会合がそろそろお開きになろうかというころ、友人から一人の老人を紹介された。「ヨネさんだよ」。知っている人、知っているはずの人だが、半世紀近く見ていないその …

騒音書簡2-31

2024年9月30日 良彦さま 先日、京都ミングルという小さなスペースでユンツボタジと僕と二人だけの爆音デュオ・ライブをやった。京都デュオは、パーカッションとキーボードの二つのみだったので、我々としてもレアな感じになった …

騒音書簡2-30

2024年8月30日 Sô-siどの、 ライブ空間を思い浮かべてもらいたい。「体験」は言わば流れだ。体験する「私」にとって、それは「すでにそこにある」。いつはじまったのかいつ終わるのか分からず、というかどうでもよく、「私 …

騒音書簡2-29

2024年7月29日 市田大兄 記憶というものは不確かである。そこに自分がいたかどうかも定かではない。私は思い出す。丘の上に月が昇っていた。私は月を見たのか、そして同時に見なかったのか。丘なんかなかったのだ。エニシダの小 …

騒音書簡2-28

2024年6月29日 創士兄、 いやあ連載第27回、我々の27通目の手紙はようやく二重奏の真骨頂を見せましたな。喜ばしい。「経験」を主題に二つの旋律を同じ時間の中で絡み合わせている。オーネット・コールマンとドン・チェリー …

騒音書簡2-27

2024年5月28日 良彦さま デスマス調は日本語のひとつのテクニックなのだから、それには気をつけなければならない。君の前葉を読んで、これは、ぜひとも「経験」等々について自分の考えを述べないといけないと思った。この反論は …

騒音書簡2-26

2024年4月30日 鈴木創士様、 前回のお手紙は実に貴兄らしい、というかミュージシャンらしい反応と拝読しました。つまり聞き手としては、「そうですか」とさしあたり言うほかない創作家の内的経験を語っている。「~は恐ろしい」 …

騒音書簡2-25

2024年3月31日 市っちゃん、 前葉では、君はモーツァルト+森田潤の『レクイエム』をまだ聴いていないようだから、まずはその感想を待つことにしよう。 ともあれ、モーツァルトが18世紀の歌謡曲だという君の意見はおおむね認 …

騒音書簡2-24

2024年2月29日 創士くん、ついでに森田くんにも、 ひょっとして、と思いつつひと月経ってしまった。ひょっとして森田版『レクイエム』が送られてくるのではないか、その感想がこちらからの書簡第24葉になるのではないか、そう …

騒音書簡2-23

2024年1月28日 市田さま 君にコルトレーン役を引き受けてほしかったのは、なにも君をコルトレーンのような精神的求道者にしたいわけではないし、君のことをまったくそう思ってもいないが、たまたまコルトレーンとドルフィーの話 …

騒音書簡2-21

2023年11月28日 親愛なる良彦さま 「完全にってわけじゃない」けど、君が言うように、リズムが狂っている、あるいはリズムを狂わせるのは、自慢することではないが、僕のオハコかもしれない。いや、いや、もちろん自慢している …

騒音書簡2-20

2023年10月28日 レディース・アンド・ジェントルメン、 みなさんに向けて今回は書きます。前回の鈴木創士からの手紙は「まだ」私に宛てたものとは受け取れません。アルトーの言葉を自分のものとして私に届けているわけではなさ …

騒音書簡2-19

2023年9月25日 親愛なる市田君、 アルトーがヴァレーズとオペラを作ろうとしたのは、1932、3年頃だった。ヴァレーズの「Ionisation」も「Octandre」も作曲されていたが、レコードもないし、演奏会も稀だ …

騒音書簡2-18

2023年8月25日 鈴木創士兄、 アルトーとヴァレーズの話は、以前、貴兄の文章で読んだ記憶がある。そのときにも思ったが、アルトーはヴァレーズの特にどの曲にどのように惹かれたのだろう。文献的には知りようないかもしれないが …

騒音書簡2-17

2023年7月28日 親愛なる市田君、 アントナン・アルトー。ひとつの名前。単純にして同時に複雑な署名。僕が最初に書いた本は、『アントナン・アルトーの帰還』だった。小説仕立てだったが、監禁されていた精神病院を退院して、ア …

騒音書簡2-16

2023年6月28日 創士くん、 せっかくだからアルトーに託けた話をもう少しだけ。君の音作りに一定親しみ、君の小説を読み、また「偽の古典主義者」だという君の自己規定を知るにつけ、常々考え込んでしまう問いがある。これのどこ …

騒音書簡2−15

2023年5月21日 親愛なる市田 前回の君の手紙に答えるべきことが色々あるようだ。 無関係のあり方も千差万別。僕は勝手にその一つをアラン・バディウ風に「非-関係」と呼んでいる。サルトルの話はすごく腑に落ちるし、怒るどこ …

騒音書簡2−14

2023年4月30日 鈴木創士殿、 もうすぐ「5・21」40周年ライブなんだね。その機会に君が、別働隊unit PとはいえEP-4にヴォーカルを入れるとは嬉しいニュース(にしてもPって何?)。たまたまマーク・スチュアート …

騒音書簡2-13

2023年3月31日 Mon camarade 僕も音楽と言葉の通常の合体には耐えられない。まあ、他人がうたっている歌を聞くとき、僕はほぼ言葉の意味を無視する、というか耳にほとんど入ってこないから、別にそれほど嫌悪感はな …

騒音書簡2-11

2023年1月31日 親愛なる友 歌……。すべての音楽、あるいは「音」が、「歌」に収斂するのかどうか僕にはわからない。最初に「歌」があったのか、「歌」とともに、「言葉」やメロディ、リズム、その他のものが、我々の「血肉」に …

騒音書簡2-10

2022年12月29日 鈴木創士兄、 困るなあ。僕は貴兄たちのアルバム──LAST CHANCE IN KOENJI──を批評するのに適任ではないと思うぞ。特に批評を貴兄が求めているのではない、ということは僕も分かってい …

騒音書簡2-09

2022年11月28日 Ma vieille branche, 1)2)どうもお互いの返答はうまく噛み合っていないようだが、というかこんな風の吹きまわしになるのが佐藤薫の仕組んだ往復書簡なのだろう。それに僕の設問の立て方 …

騒音書簡2-8

2022年10月29日 鈴木創士殿、 何に対しどう反論されているのか、ちょっとよく分からんが、とりあえずいくつか応えてみる。それらはたぶん、相互に連関しているはずだ。 1) 『鑑識レコード倶楽部』におけるアリスの位置は、 …