騒音書簡2-19

2023年9月25日 親愛なる市田君、 アルトーがヴァレーズとオペラを作ろうとしたのは、1932、3年頃だった。ヴァレーズの「Ionisation」も「Octandre」も作曲されていたが、レコードもないし、演奏会も稀だ …

騒音書簡1-19

2023年9月30日 創士くん、 森田潤と君の競作、 《Vita Nova》を聴きながらこれを書きはじめている。率直に言うが、これは「作品」として、EP-4 unitPのライブよりよほど面白いではないか。二つを比べること …

騒音書簡1-18

2023年8月31日 Mon cher ami, 君が言うように、「作品」とはゼロから出発してすべてをつくることであれば、「狂気=作品の不在」とはゼロから出発して「全て」をつくれないということになる。ところで、フーコーが …

騒音書簡2-18

2023年8月25日 鈴木創士兄、 アルトーとヴァレーズの話は、以前、貴兄の文章で読んだ記憶がある。そのときにも思ったが、アルトーはヴァレーズの特にどの曲にどのように惹かれたのだろう。文献的には知りようないかもしれないが …

騒音書簡2-17

2023年7月28日 親愛なる市田君、 アントナン・アルトー。ひとつの名前。単純にして同時に複雑な署名。僕が最初に書いた本は、『アントナン・アルトーの帰還』だった。小説仕立てだったが、監禁されていた精神病院を退院して、ア …

騒音書簡1-17

2023年7月29日 Cher Sô-si, 「言葉」は「作品の不在」と同時的なのだろうか、と君は書いた。少し腑分けが必要かと思う。まず「作品の不在」について。この表現を有名にしたのはフーコーの「狂気、作品の不在」という …

騒音書簡1-16

2023年6月28日 良彦さま、 我々の聴覚体系に入り込んだ「隠された歌」はまだ言語ではないかもしれない。この歌は僕にとって「言葉」を伴っているのか、あるいは「言葉」そのものであるのかどうかいまだ確信がもてないと僕は言っ …

騒音書簡2-16

2023年6月28日 創士くん、 せっかくだからアルトーに託けた話をもう少しだけ。君の音作りに一定親しみ、君の小説を読み、また「偽の古典主義者」だという君の自己規定を知るにつけ、常々考え込んでしまう問いがある。これのどこ …

騒音書簡1−15

2023年5月26日 So-siくん、 ひょっとして君は、言語がなくても音楽はある、と考えているのだろうか。「音楽を聞いたことがない状態を想像できない」とはそういうこと?「我々の聴覚の体系」に入り込んだ「隠された歌」は言 …

騒音書簡1−14

2023年4月30日 学兄どの、 前回の君の手紙を理解できているかどうか、はなはだ心もとないが、思いついたことを書いてみる。 君が最後に引用したドルフィーの発言、「音楽はいったん終われば空中に去ってしまう。二度とそれを捕 …

騒音書簡2−15

2023年5月21日 親愛なる市田 前回の君の手紙に答えるべきことが色々あるようだ。 無関係のあり方も千差万別。僕は勝手にその一つをアラン・バディウ風に「非-関係」と呼んでいる。サルトルの話はすごく腑に落ちるし、怒るどこ …

騒音書簡2−14

2023年4月30日 鈴木創士殿、 もうすぐ「5・21」40周年ライブなんだね。その機会に君が、別働隊unit PとはいえEP-4にヴォーカルを入れるとは嬉しいニュース(にしてもPって何?)。たまたまマーク・スチュアート …

騒音書簡1-13

2023年3月28日 創士兄、 「ボードレールの世界」はあるが「マラルメの世界」はない、か。その通りだと思う。しかし自分の理解がちょっと常識的文化史にもたれすぎているかも、と危惧するから、擦り合わせのためにその理解を疑問 …

騒音書簡2-13

2023年3月31日 Mon camarade 僕も音楽と言葉の通常の合体には耐えられない。まあ、他人がうたっている歌を聞くとき、僕はほぼ言葉の意味を無視する、というか耳にほとんど入ってこないから、別にそれほど嫌悪感はな …

Shigeki Ieguchi

家口成樹
PARA、EP-4 [ fn.ψ ] 、Singū-IEGUTIのシンセサイザー、キーボード奏者。90年代初めよりヘヴィサイケデリックロックバンド、花電車のメンバーとして音楽活動を開始。 シンセサイザー、PC、エフェクタ …

騒音書簡2-12

2023年2月28日 同志Sô-siへ、 歌……ゴダールは映像 image と音 son からなる映画 film を≪Notre musique≫(我らの音楽)と呼んだが、僕は音楽と言葉からなるものを「歌」と考えたい。と …

騒音書簡1-12

2023年2月28日 市田君 「勝手に死ぬことは許されない」かよ。勝手に死ぬのは難しい。勝手気ままな性癖は一生をふいにしたかもしれないな。 ところで、君があとがきを書いた岡崎次郎『マルクスに凭れて六十年』(航思社)を読み …

騒音書簡2-11

2023年1月31日 親愛なる友 歌……。すべての音楽、あるいは「音」が、「歌」に収斂するのかどうか僕にはわからない。最初に「歌」があったのか、「歌」とともに、「言葉」やメロディ、リズム、その他のものが、我々の「血肉」に …

騒音書簡1-11

2023年1月30日 創士へ、 勝手に死ぬことは許されない、と心得よ。一旦共演をはじめてしまったからには、それが音楽であろうと手紙の応酬であろうと。自然死であろうが勝手な離脱は「はじめる」という黙契に反する。どう終えてよ …

騒音書簡2-10

2022年12月29日 鈴木創士兄、 困るなあ。僕は貴兄たちのアルバム──LAST CHANCE IN KOENJI──を批評するのに適任ではないと思うぞ。特に批評を貴兄が求めているのではない、ということは僕も分かってい …

騒音書簡1-10

2022年12月31日 市田お兄さん 終わりはなかなか来ないようだ。サド侯爵の言い方を借りれば、共和主義者たらんとせば、終わりまであと一歩だ。今日は大晦日だし、世界の終わりが元旦の時報とともにやって来るならすっきりするだ …

騒音書簡2-09

2022年11月28日 Ma vieille branche, 1)2)どうもお互いの返答はうまく噛み合っていないようだが、というかこんな風の吹きまわしになるのが佐藤薫の仕組んだ往復書簡なのだろう。それに僕の設問の立て方 …

騒音書簡1-9

2022年11月29日 Sô-siくん、 「ラリーズのコンサートをやって西部講堂を燃やす」。あの放言は俺としてはものごとの「終わり」という問題に関わっていた。この「騒音書簡」の最初のほうで書き、ある意味ずっとそのフィード …

騒音書簡2-8

2022年10月29日 鈴木創士殿、 何に対しどう反論されているのか、ちょっとよく分からんが、とりあえずいくつか応えてみる。それらはたぶん、相互に連関しているはずだ。 1) 『鑑識レコード倶楽部』におけるアリスの位置は、 …

騒音書簡1-8

2022年10月30日 Mon cher ami, 友人同士の手紙のやりとりというのは、そもそも変な感じがするし、恣意的にやればやるほど、やりにくいところがあるのもわかってきた。まあ、嫌いな奴との往復書簡というのも考えに …

騒音書簡1-7

2022年9月29日 Cher Sô-si, 裸のラリーズなぁ。水谷さんが亡くなり色々と再発されているし、なにか書いておくべきタイミングなんだろうと思う。しかし、これは直接言ったかと思うが、水谷孝と裸のラリーズについて今 …

騒音書簡2-07

騒音書簡第七回
2022年9月30日 市田君 前回の君の手紙に反論がある。好き嫌いで物事を判断することは馬鹿げているし、反動的で無益だということも重々承知している。だが僕は「文学」が好きかとも、「哲学」が好きかとも聞いていない。そうすぐ …